2025/10/06 09:00
五十肩の評価と施術方針
1. 基本的視点
当院では五十肩の患者様だけではありませんが、可動性の問題(Mobility dysfunction)安定性/運動制御の問題(Stability/Motor Control dysfunction)を分けて考えます。
五十肩の患者では「単に肩関節だけの動きが悪い」とは限らず、「胸椎や肩甲帯の可動性低下」、「運動制御の破綻」が複合していることが多いからです。
2. 五十肩で想定される典型的なパターン
<可動性の問題>
- 肩関節包(特に後方・下方)の硬さ
- 肩甲上腕リズムの制限
- 胸椎伸展・回旋の可動性の低下
- 胸郭拡張の可動域の低下
<安定性・運動制御の問題>
- 肩甲骨周囲筋(前鋸筋・下部僧帽筋)の機能不全
- ローテーターカフの協調性低下
- 体幹から上肢への力伝達の不良
3. 評価の流れ
<肩を動かすことで痛みと代償動作のチェック>
「痛み」「可動域制限」の有無と原因を分類
- 肩関節そのものの可動域(外旋・内旋・水平伸展)
- 胸椎伸展・回旋の可動性
- 肩甲骨のモビリティ/安定性
- 頸椎の可動性
4. 施術方針の立て方
(1) 疼痛・拘縮期(Acute〜Frozen stage)
目的:炎症管理と過剰な代償運動の抑制
<介入例>
- 肩関節自体は無理に動かさず、胸椎・肩甲骨の可動域維持
- 軽度な振り子運動や等尺性収縮で循環改善
- 呼吸法(胸郭拡張による胸椎伸展アプローチ)
(2) 拘縮が強い時期(Adhesive stage)
目的:可動域の増大+肩甲上腕リズムの回復(ここで時間がかかることが多いです)
<介入例>
- 後方関節包・下方関節包のモビライゼーション
- 胸椎モビライゼーション(エクササイズバンド・フォームローラー)
- 肩甲骨セッティング(前鋸筋・下部僧帽筋活性化)
(3) 回復期(Recovery stage)
目的:安定性と運動制御の再教育
<介入例>
- ローテーターカフと肩甲骨筋群の協調運動(壁スライド・ダイナミックプランク)
- 全身運動連鎖を利用したファンクショナルエクササイズ(例:スクワット+上肢挙上)
- 日常生活動作に即した動作練習(結帯・頭上動作の再獲得)
5. まとめ
当院では、五十肩の施術は「局所の可動性改善」、「肩甲帯・胸椎のモビリティの回復」、「安定性・運動制御の再教育」の順に進めるのが基本方針となります。
五十肩の施術は時間がかかることが多いですが、なかなか腕が上がらなため日常生活が不自由になっている方もいらっしゃると思いますので、お力になれれば幸いです。
また、強い痛みはないけども肩が動かしづらい、肩こりがひどい、背中が張っているなどがあれば痛みを出現させないためにも早めの対処が必要かもしれません。
お気軽にご相談くださいね。